隣のお茶は、青い 2020 - 企画ウラ話① 異業種ゲストをなぜ呼んだ?-

今年もこの季節がやってきた。

昨年から2年連続で取り組んでいる、知覧茶のブランディングイベント「隣のお茶は、青い」だ。

まずは簡単に概要から。

【隣のお茶は、青い2020 |イベント概要】

◆日時:2020年2月1日(土) 14時~17時

◆場所:東京都・築地「DMZ WORK cafe」

◆来場者:完全ご招待制 16名

(カフェ・飲食店経営者、マーケター、イベンター、デザイナー、人材コンサル、ドローン開発者、観光学研究者、メディア関係者などの異業種からのゲスト)

◆内容

・知覧茶の産地と茶業界の現状と課題について伝えるプレゼンテーション

・日本茶カフェ「Saten Japanese Tea」オーナーの小山和裕氏と知覧茶コーディネーターのトークライブ

・多様な茶種を愉しみながら生産者の想いにふれるブーストーク


▼ ちなみに参考までに昨年実施した内容については、過去記事を参照。 

当日は、私の大好きな日本茶カフェ「Saten japanese tea」のオーナー、小山さんに全面的にご協力いただき、トークにスペシャルな知覧茶の抽出方法のデモンストレーションに、と、イベントに華を添えていただいた。


イベントの内容はいたってシンプル。まず導入として知覧茶の現状についてプレゼン形式でお伝えし、小山さんと私でトークセッション。今回のテーマは、「荒茶生産の未来」というタイトルで、コーヒーとお茶との対比構造を示しながら、生産地の将来に思いを馳せた。

その後、3人の各生産者と小山さんとでそれぞれブースを持ち、ゲストとお茶を飲みながら意見交換を行った。


内容は簡単にふれて、企画者の私しか書けない「なぜ、このイベントを実施しているか」というWhy?の部分のみ、何回かに分けながらゆるりと綴っていきたい。


|2年目の挑戦。お茶に関係ないゲスト大集合

2年目の今年は、普段お茶に全く関係ない仕事をしているゲストも多くお招きした。当日参加されたのは、ITや旅行業など茶業界から遠い業界の人材も含め、計16名。

それぞれの視点で、知覧茶について考えたことをアウトプットしていただき、新たな取組みやプロジェクトを生むことを最大の目的していた。

「深い緑の知覧茶は絶対的なPRポイントとなりえる。」「産地として資源は十分にあると思う。外部人材が関わることでシステムが整い、産地への人の流れや物流が大きく変わるのでは。」「実際はそうでないのに、荒茶という言葉が、粗悪品のように聞こえる。言葉自体を“クラフト茶”等表現を変えて消費者に伝えてはどうか。」など、生産地にはない視点から、多くの意見が交わされ、客観的な視点は、今後の知覧茶の取り組みに生きるものばかりだった。

やっぱり異業種の方から意見をもらうって、とても大事。(しみじみ)


|日本茶カフェオーナーが求めるもの、産地とのねじれ

昨年は、茶業界のニューカマーである「日本茶カフェのオーナー」を中心に特に消費者に近い業種の12名の方に参加いただき、荒茶生産地として、様々なご意見やご要望をいただいた。私は、日本茶カフェが大好きだ。…というか、元はただのお客さんだった。

そんな日本茶カフェファンの私が、産地に暮らすようになってわかったのは、カフェと産地はとてもとても遠いということ。

私が日本茶カフェに目覚めた時代は、シングルオリジン(単一農家・単一品種)にこだわるカフェの最盛期。(最近は、少しこの流れも落ち着いてきたような印象もあるが…)。過去に、コーヒーがブルーボトルコーヒーを筆頭にサードウェーブの流れがあったように、日本茶でも、ようやく産地や生産者、品種が注目される世の中になってきていた頃だったと思う。

でも、大規模産地である南九州市はその流れには適合できずにいたと思う。

それは、どうやっても現行の流通構造においては、生産者の名前が出たり、単一品種で小売販売されたりということは、非常に稀な状態であったからだ。


|日本茶カフェに、まずは知覧茶の存在を知ってもらわねば。

単純にニーズがあるならばやるしかない。そう思ってトライしたのが知覧茶コーディネート業という仕事だった。このコーディネート業というのは、情報の非対称性があってはじめて成り立つ仕事だ。

産地には、数多生産者がいて、もちろん多数の品種がある。もっといえばそれぞれの特徴、こだわりがある。でもそれはどこにもまとまって書いてないし、これを書くには相当のリサーチやヒアリング、適宜必要に応じて情報を引き出せるような、”立派な情報公開の箱”がないといけない。

そんなのをすっ飛ばして、「まずは人海戦術だ!」とトライしたのが、この1年だった。荒茶の通常ロットの30キロ以下で、ときには数百グラム単位で販売していく仲介業だ。


はじめてみると、じわっと小売らしい効果が出てきた。荒茶の取引では、当然生産者は、自分のお茶が最終的に誰に届いているか分からなかったのだが、(茶市場で取引されているため、茶市場以降の流れを生産者ではつかめない)小売では、この「人」を通じて、海外のこの「人」に届いていた、とか、この品種はこういう感想が多い、など、今までなかなか生産者に入らなかった声や情報やなんやかんやが入ってくる。


|小ロット取引は数年単位の調整が必要。

なるほど、知覧茶のブランドの価値づけには「小売」だ。

そう確かな感触を感じながら仲介を続けていた矢先。

「例年以上に早いスピードで、もう在庫がなくなりそう。」

とある生産者からそんな声があがってきた。嬉しい悲鳴だ。

でも、嬉しくないこともあった。

なるほど、荒茶生産で生計を立てている生産者が確保できる小売茶はまだまだ少なくて、需要と供給のバランスを調整するのは、容易なことではなく、これはもしかしたら、数年、数十年単位のプロジェクトになるんじゃないか?…と。

どういうことかというと、荒茶(特に新茶)で1年の生計を立てている生産者には「小売を増やして」なんてことを、今の状態ではまだ言えず、小売を求めてくださっている事業者さんを増やそうにも、安定的に供給をお約束できるかは分からず…それゆえに、容易に事業者さんにも営業をかけられない。

なんて、ジレンマ。。

私は過去に、こういった流通に関する事業をさばいたことがないこともあって、明確な打ち手は見つからず。荒茶生産地を否定してみたり、荒茶で取引してもらえる事業者さんを探し回ったり、、とだいぶ迷走した時期を過ごすこととなった。

|小売以外で「知覧茶のブランド価値」をつくるには?知覧茶を資源として捉える

元々、ベンチャーやNPOという比較的スタートアップなところの出身である私は、上記のような課題をもっと、色んな人にオープンにして、聞いていこうと思った。

というか、それしか方法がみつからなかった…のもある。

昨年の「隣のお茶」の来場者には「荒茶生産地の生き残り」について、何度も意見を伺いにいき、元々勤めていたベンチャーの先輩たちにも意見を求めた。しまいには、国の茶業試験場の先生方にも意見を伺いにいった。

すると、だんだん自分には見えてなかった、近隣の飲料業界のコーヒーやら、お酒やら、はたまた一次産業しばりの水産業においても、過去・現在で似たような構造や課題があることがわかってきた。打開策が出てきたというより、徐々に自分の中で、「荒茶生産地だからことできること」について目を向けることができるようになってきたのが大きい。


「知覧茶は概念だ」

昨年の「隣のお茶」で製作した冊子に載せた文言だ。

これは、私が「知覧茶って面白い!」と思った4〜5年前からずっと、思っていること。

知覧茶を荒茶だ、小売だ、というお茶として見るのではなく、人も畑も、この環境も組織も知覧茶にまつわる「あれこれ」すべてに目を向けると、できることは無限にあり、ユニークさが際立ってくる、ということだ。

例えば、旅。

知覧茶の生産者と語りながら繰り広げられる産地旅なんてものは、それぞれの個性が生きていて、やっぱりユニークでワクワクさせられるものだ。

だからこそ、「異業種の人」にこの「知覧茶という資源」を見てもらわないと、と思った。

こうして今年の「隣のお茶」のゲストは、一見茶業から遠そうな”異業種”の方たちにお声掛けしたというような経緯がある。


イベントが終わってから約20日。

ちょっとずつではあるが、面白い案件、面白いアイデアが私のもとに飛び込んできている。


いや〜、だからイベント企画・運営は病みつきになってしまう。。

祭り女のどうしようもない性ってやつなのだろうか?

でも、イベントは終わってからが勝負。

少しでも実を結ぶよう、まがいなりにも頑張ってみようと思う。

川口 塔子 |tottoco

知覧茶コーディネーター/ PRプロデューサー「川口塔子」

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